WORKS事例紹介
可変的なパブリックスペースが街の風景を変える
兜町第1平和ビル
Kabutocho Heiwa Building No.1
移り変わる花実の彩りと
可変性が生む街のにぎわい
日本の金融街である日本橋・兜町エリア。1983年に竣工したオフィスビルの外構に、人が滞在できる空間をつくりたいという依頼からはじまったリニューアルプロジェクト。
再開発で感度の高いショップが増え、生まれ変わろうとしている兜町に対して、parkERsは訪れた人が誰でも自由に過ごせる、街にひらけたパブリックスペースをご提案。エネルギーを蓄え、共有し、分け与える。そうした人々の活動が新しい兜町の風景になっていく未来を描き、「Stock Share Scape」をコンセプトに計画しました。
可変性のあるベンチ&サイドテーブル、気軽に使えるハイカウンター、複数人でも座れるボックス席の3ゾーンで構成。利用者にワンアクションしてもらう仕掛けをつくることで、親しみを生み、常に風景が移り変わる空間に。植栽計画では黄色い花や実をつける樹種を中心にコーディネートし、一年を通して満遍なく見どころがある計画としました。
また本物件ではイメージカラーの設定や名称「ki-ten」の提案、ロゴデザインも手掛け、空間全体をプロデュースさせていただきました。
- DATA
- 弊社の業務内容:コンセプト提案、ランドスケープデザイン設計・施工、植栽計画・施工、植栽メンテナンス、ロゴデザイン
さまざまな用途に対応できる選択肢をつくりゾーニング。「金融」や「活発」な街の印象からイメージカラーを黄色に設定し、足下の蛇籠(じゃかご)とともに全体をつなげます。
車の進入を制限するボラードをイメージした支柱が無数に並び、天板をつければサイドテーブルに。使い勝手に合わせて好きな天板を選び、座りたい位置へ持っていくことができます。大小さまざまなサイズ、ドリンクホルダーの穴が空いているものなど、天板にはバリエーションをもたせました。ビル周辺に点在するショップのテイクアウトカップが収まる設計です。
ベンチの座面も可動式。横にスライドできるので、周囲との感覚をあけて座ることも、座面をつけて隣合わせで座ることもできます。
複数人での利用にも使えるボックス席。植栽帯のプランターはベンチの機能をもたせ、自由な使い方ができるように。
秋に黄葉するアオダモ(左)と、「兜」という字に「白」が含まれることから白い花をつけるリョウブ(右)を植えました。春の新緑から、夏は生い茂り、秋は黄葉して、冬に葉を落とす。自然のサイクルをくり返す姿に四季を感じさせます。
中央にはポスターフレームを設け、周辺のショップやスポットが集約されたオリジナルマップを設置。このパブリックスペースを基点に、兜町一帯を楽しんでほしいという施主の想いを受け提案させていただきました。
ミツマタの花。春には黄色い花を咲かせる(2024年12月撮影)
春に黄色い花をつけるサンシュユ、秋に黄葉するコハウチワカエデ、冬に甘い香りの黄色い花をつけるロウバイ。イメージカラーの黄色を軸に、一年を通して彩りが生まれるよう計画しました。視覚からもにぎやかさを生みます。
また金融の街から連想する花言葉や文化的背景を持つ樹種を織りまぜて、この空間ならではの植栽計画をほどこしました。
植物のマルチングに用いたウッドチップ、樹名板、壁掛けポスターフレームの背面には、「東証上場の森」が所在する秋田県由利本荘市矢島地区のスギを活用しました。街づくりを通して森の保全活動に寄与します。
車止めをモチーフにしたヒップバーが印象的なハイカウンター。スタンディングでの利用はもちろん、ちょっとした休憩に寄りかかり楽に過ごせるよう設計。
夜は、蛇籠に仕込んだガラスの石が光を灯し、空間全体で一つのラインが浮かび上がります。照明でやさしくつなげながら、足元を照らしてくれます。
平和不動産が掲げる兜町の街づくりのタグライン「起点であり、輝点となる。」から、この空間に「ki-ten」という名称を提案させていただきました。
「ki-ten」という名前は、「起点」「輝点」「気点」「樹点」「黄点」 といった様々な言葉に由来しており、それぞれの「点」が交わることで 訪れる人々に新たなアイデアやつながりをもたらす場所であってほしい という想いをこめました。
ロゴデザインも手掛け、特徴的なコの字型の空間をモチーフに用いて、旗が立っているようなデザインとしました。
ベンチ座面には「ki-ten」のロゴと植物のモチーフを。暗くなると光が漏れシルエットが浮かび上がります。